前津小林文庫 史料整理報告書(2018年度)

田中 葉月

2.【往来物】 2.1【古往来】
大洲本模刻『口遊』

[著者]源為憲
[年代]文化4年(1807)刊
[出版事項]風月荘左衛門・林伊兵衛

[概要]平安中期(天禄元年(970))成立。
源順 門下の源為憲が、太政大臣藤原為光の長子松雄君 (後に誠信)のために書いたとされる教養書で、
広範な知識を反復しやすいよう短句にしてまとめたもの。
乾象・時節以下一九門に分けて列挙。
平安時代の貴族子弟の教養学習のあり方を伝える貴重な資料で、
後に『続群書類従』32 輯 上にも収録される。

『口遊(くちずさみ)』は、大洲観音真福寺宝生院(大須文庫)が所蔵する真福寺本(写本)
が孤本として現存する(重要文化財)。この真福寺本(弘長3年(1263)成立)写本を、
寛政 11 年に大館高門が模写・校正し、これを底本として文化4年(1807)に
[京都]風月 荘左衛門より自費で木版本を刊行したとされる。
本書は、この文化4年版系統とみられる。
本書奥書には「寛政十一年己未仲冬以大須文庫古謄本模写令平安書賈某上木伝不朽云、
大館高門 文化四年丁卯仲夏発兌、皇都書肆、林伊兵衛、風月荘左衛門」とある。
本文模 刻に差異はみられないが、奥付書肆名を風月荘左衛門:佐々木摠四郎とし、
見返のない(国 立国会図書館所蔵本)と、風月荘左衛門:林伊兵衛とし
扉に内題を付す二種が確認され、 本書は後者にあたる。
同板木による再刊もしくは、表紙替え等が推測される。

3【郷土二千六百年展覧会関連資料】
3.1.【封書:5通】 内訳 ・『案内状』:3枚(共通)・『郷土二千六百年展覧会出陳目録』:一冊 ・
『手紙』:8枚 『郷土二千六百年展覧会出陳目録』草稿:1冊 ハガキ:1通 等

昭和 15 年 2 月 10 日〜18 日、郷土研究連盟主催、愛知県・名古屋市の両後援による
『郷土二千六百年展』が十一屋七階ホールにて盛大に開催された。
本資料はそれに関連する書簡、目録等の一部とみられる。
山田氏は、郷土研究連盟に所属し、展覧会開催にあたっては委員も務められていたことから、
書簡からは、この 展覧会に賛同し、諸処の業務をてがけられていたことが伺える。
『郷土二千六百年展覧会出陳目録』には、愛知県、市立図書館、洲崎神社等からの出品がみえる中、
山田氏個人の出品も多々確認される。特に大洲観音真福寺に関連する資料の出品が注目される。
未だ所在の確認がとれていないものもある。前記『口遊』もこの展覧会に出品された書籍である。